ダニエル・オトゥイユのコメディ

去年公開されたダニエル・オトゥイユの映画をDVDで見ました。

地味でさえない経理のおっさんが、80年代ポップスター(小物)の運転する車にぶつかって、そのときから、彼の頭の中に、ポップ・スター・ジルが住みつくようになった...という筋。てっきり軽い映画かと思っていたのですが、最後まで見ると、実は一筋縄でいかないシナリオ、よく考えると、これはユングの集合的意識の話なのかなあ、と。
しかし、パリ西端のビジネス街ラ・デファンスの非人間性をここまでちゃんと描いた映画も珍しいのでは。ラ・デファンスは、近代的なオフィスビルと近郊交通網でできた非常に80年代的な開発地区で、主人公のおっさんは珍しくも、当時のモデルハウスみたいな高速道路沿いのこの地区のアパートに住み、会社に歩いて通っている。このアパートの内装が、本当に80年代からストップしていて、ミニテルとか、当時のポスターとか、「どこで見つけてきたんだろう?」というようなブロカントもので埋められている。ロマンティックなアンティック・インテリアで売った「アメリー」のパロディか?と言うくらい。
この主人公の仕事での「サムさ」は、BBCTVシリーズ『ザ・オフィス』に通じるものがある、と思えました。
それにしても、ダニエル・オトゥイユの演技のうまさ!最近は「あるいは裏切りという名の犬」のヒットで、渋い俳優として有名な彼ですが、もともと舞台出身の芸達者。コメディも定評があります。
この映画、まだ日本で公開されていないようなので、ネタバレにならないよう詳しく書きませんが、いや、本当に、このポスターのキッチュさにもかかわらず、なかなかな映画でした。