鴻巣友季子 『やみくも 翻訳家、穴に落ちる』

やみくも―翻訳家、穴に落ちる

やみくも―翻訳家、穴に落ちる

久しぶりに、上手な日本語の文章を堪能させていただきました。文章が巧み、というだけではなく、つい「うんうん」とうなずきながら読んでしまう。
たとえば、「ケータイっていまだに野暮な感じがしてしまう。あの、自分の都合をひとりで抱え込んで持ち歩くさまが、妙にいじましく感じるのだ。」(『電話』)
どの章も、日常をうまく書くエッセイに留まらず、文学者らしい著者の想像力で虚実ないまぜの不思議な世界へ連れて行ってくれます。
一番好きな章は、『シンジャブッカク』。前文引用したいくらい、面白かったです。