ピナ・バウシュと今年のテアトル・ド・ラ・ヴィルで見たダンスのまとめ

今年も行ってきました、ピナ・バウシュ。今年の演目は新作で『Bamboo Blues』インドのカルカッタケララに滞在して作られた作品。
「ソフトすぎる」「昔より詰まんない」という声も左右から聞こえましたが、圧倒的な量の布地(シフォン)、そして女性の長い髪が作るダンスは、ムーブメントの詩人そのものだと思えました。世界から、その雑多ないく億もの「動き」を受け止め、そこから抽象化された動きだけで紡がれる詩、ピナ・バウシュの舞台を言語化しようとすると無力感にとらわれますが、それは彼女の舞台を見ることが、言語化できない、する必要の無い、なにか美しいもの、つらいもの、悲しいものと出会う体験だから。

Bamboo Blues création
une pièce de Pina Bausch
mise en scène et chorégraphie Pina Bausch, décor et vidéos Peter Pabst, costumes Marion Cito, collaboration musicale Matthias Burkert, Andreas Eisenschneider, assistants à la mise en scène Marion Cito, Daphnis Kokkinos, Robert Sturm
avec Ruth Amarante, Pablo Aran Gimeno, Rainer Behr, Damiano Ottavio Bigi, Clémentine Deluy, Silvia Farias, Nayoung Kim, Eddie Martinez, Thusnelda Mercy, Jorge Puerta Armenta, Azusa Seyama, Franko Schmidt, Shantala Shivalingappa, Fernando Suels Mendoza, Kenji Takagi, Anna Wehsarg

ところで、29年前からテアトル・ド・ラ・ヴィルはピナ・バウシュを毎年プログラムしているそうです。私が最初にパリで見た89年には、まだ上演の14日前に切符が割りと普通に買えましたが、現在では、もはや1年前から年間会員券を買わない限り、ピナ・バウシュのチケットはほぼ入手不可能。それどころか、会員券の申し込みにうかうか迷っていると、結構いろんな演目がすでにソールド・アウトになってしまったりします。たとえばこの07/08シーズンでは、Sidi Larbi Cherkaouiが取れませんでしたね。
年間会員券Abonnementとは、秋から翌春の劇場シーズンの1年分のチケットを予約・先買いしておくことです。例えばこの2008年6月27日のチケットは、去年の6月の末に申し込んで、支払いは7月の末でした。私は友人と数年前から、今年からは夫も仲間に入れて3人で今シーズンはダンス10本を見ました。
一番良かったのは、アラン・プラテルAlain Platelの『Vsprs』でした。これは2006年の初演に続いて見るのも2度目だったのですが、モンテヴェルディをモダン・ジャズに編曲した音楽とともに、テクニックもすばらしく、ユーモアもあり、時々恐ろしい思いもさせられる、ここ数年見たものを思い返しても一番良かった作品でした。
新シーズンのチケット予約も、なんと今年は受付開始から1週間足らずで演目を選んで申し込むという段取りの良さ!それでもすでにレジーヌ・ショピノRÉGINE CHOPINOTの新作は客席数の少ないポンピドーセンターでやるということもあってソールドアウト。この人気は価格から来るのでしょうか、上記3カンパニーに、ジュリエット・ビノシュの出る作品やマギー・マラン、また演劇で三島の『サド公爵夫人』もいれて全部で10本の予約で146ユーロでした。内容から言ったら本当に1年分前払いする価値があります。
夏は舞台はお休みで、ちょっと寂しいですが、それだけに秋からのシーズンが楽しみです。